銀の月光の中、白き騎士と黒き王は惹かれ、求め合い、
  果てなき漆黒の闇へと堕ちていく。

  ―――この時が永遠に続くことを願いながら。


    モノクロメトロノーム

  「スザク…」   月光の中 自分を呼んだ彼は、窓際に寄りかかって足を組み   すらりとした立ち姿を見せていた。   片手にはスザクをこの場へと呼んだ携帯電話。   スザクの姿を認めると、もう用はないとばかりに携帯電話を放り投げる。   それはベッドのスプリングでバウンドし、動きを止めた。   誰もが入ることを許されないような、そんな雰囲気すら感じられる光景。   その静寂に包まれた厳かな世界には、一人ルルーシュだけが存在していた。   一言声をかけたきり、ルルーシュは何を言うでもなく、   ただ薄い笑みを浮かべそっと目を伏せる。   静かな世界の中、細い指が音もなく窓際においてあったワイングラスへと伸びた。   中に入っているのは血のように紅いワイン。   ルルーシュはまるでこの場にスザクなどいないかのように、   ゆったりとした優雅な動作でワインを一口、口に含んだ。   月光の中、ワインを味わっているのか、ルルーシュは目を細めひどく満足げな顔をする。   そしてようやくスザクのほうへ視線を投げかけた。   窓辺から差し込む月光がルルーシュの顔に陰影をつける。   ――その姿はまるで一枚の絵画のようで。   時たまルルーシュの手の中にあるワイングラスの中身が揺れ、銀色の光をはじく。   その完成された闇の世界に目を奪われ、スザクは息をとめたまま扉の前で立ち尽くしていた。   その様子にルルーシュはくすり、と笑みを零し、再び彼の名を呼んだ。   その声で我に返ったスザクは2、3度目を目を瞬かせ、慌てて息を吐きだす。   束の間の夢から覚めたような様子のスザクが面白くて。   ルルーシュは口もとの笑みを深くすると、未だ動かないスザクを顎で促した。   静かな動作の、その意を理解したスザクは、ナナリーを起こすことがないよう   そっと扉の前から離れる。   「突然どうしたの、ルルーシュ?」   後ろでドアが閉まる音を聞きながら、スザクは軽く首をかしげた。   日付もとうの昔に変わり、世の中の人は安らかな眠りについている時間。   長い軍務を終え、ようやく寮に帰ってきたスザクのもとへとかかってきたのは1本の電話。   その電話の主はただ一言「来い」とだけ告げ、   かかってきた時と同じように何の前触れもなく通話を終えた。   その傲慢にも思える命令に従ってしまうのは   偏にルルーシュの声がいつもと違っていたから。   まるで、今にも泣いてしまいそうな、そのまま壊れてしまいそうな   ――そんな脆さを秘めた、静かな声音。   自分を突然呼び出した理由も、ルルーシュの望んでいることも   スザクにはまだ分からない。   それでも近付けば何かが分かるとでも言うように、無言の彼にそっと近寄る。   と、それを待っていたかのように、突然襟元を強く引き寄せられた。   「…っ」   唇に柔らかい感触。   それに数瞬遅れて口内に広がるワインの味。   突然のことにスザクは思わず目を見開いた。   飲みきれないワインがスザクの顎を伝っていく。   「…っは、なかなか美味なワインだろう?」   軽く息をあげ、ルルーシュがにやりと笑った。   間近に見える至高のアメジストが妖しくきらめく。   「…誘ってるの?」   顎に滴るワインをぐいっと乱暴に拭い、ルルーシュに目を向ける。   その顔はルルーシュだけが知る夜の顔。   スザクは口元に薄笑みを浮かべてルルーシュの細腰を抱き寄せた。   「さぁ、どうだか。」   されるがままのルルーシュは顔色一つ変えないどころか、   逆に煽るかのように妖艶に微笑んで見せた。   普段とは明らかに何かが違うということは分かっているのに。   ルルーシュの魅力に抗おうとするそばから、理性が消えうせていく。   「余裕、だね。そんなもの、すぐに僕が奪い取ってあげるよ…。」   「ふん、できるものならば、な。」   いつまでも可愛くないことをいうその紅唇を己の唇で塞ぐ。   ルルーシュは性急に動き出したスザクに   それでいいとばかりに目を細め、そっと耳元に唇を寄せた。   「…全てを忘れてしまいたいんだ、一瞬でもいいから…。」   「ルルーシュ…。」   切ない顔で微笑むルルーシュにスザクは一瞬息を止め、しかし理由を聞くことはせず   ただただルルーシュを求めた。   そうすることが彼の願いを叶える、ただ一つの術だとでも言うように―――。   今日も今日とて黒の王は白の騎士を誘い、   白の騎士は黒の王を求める。   いつまでも続くようで続くはずがない、白と黒の連鎖。   願わくばこの幸せな時が永遠に続くことを。   しかしこの時が永遠に続くはずがないと知っているから。   もう、自分に戻る道など残されていない。   残された道は修羅の道。   道はもう取り返しのつかないほど分かたれてしまった。   別れが目前に控えている今だからこそ、   ―――束の間の快楽に、酔わせて、ください…。  

  …相変わらずの謎文章でごめんなさいorz   そして久々に暗い(?)のを書いたら途中から謎いことになってしまいました…。   なんだろう、これ…。   おおもとを書いたのが9カ月以上前のせいか当時の私が何を考えていたのか   改めて頭を抱えてしまいました(爆死   現在脳内桃色のため途中からスザルル電波が混ざってしまった結果だと思います(爆   うん、駄目だ。しばらく暗いのはお預けにしておこうorz   プラウザバックでお戻りください。