二期のスザク復学辺り設定。

      「ルルーシュ、ちょっといいかな?」    「ん、どうしたんだスザク?」    「生徒会室で手伝ってもらいたいことがあるんだ。お願いできるかな?」    「あぁ。いいぞ」    と言ったのが今から30分前。    あの時は、まさかこんなことになるとは思いもしなかったんだ。

  ―― 恋 愛 喜 劇 ――

   「〜〜あぁ、愛しき白虎様…あなた様の逞しい胸に抱かれてしとねを共にした日を     忘れることは無いでしょう。     あなた様の熱い眼差し、性急に私を高めていく指先を思い出す毎に     私の躯は疼き、火照り、しとどに濡れそぼるのです……     ……なぁ、スザク………これは何だ?」    先ほどから目の前の紙に不穏な文字が踊っている気がするのは気のせいか?    それとも幻覚か、白昼夢か。    疑問のまま胡乱な瞳でスザクに問いかけるが、一瞬キョトンとした後、    「今度やる劇の台本。」とさらりと返される。    「はは…そうだったな。」    何を疑問に思うことがあるのか、と当たり前のことのように返されたため、    俺の疑問は気のせいだったと悟らざるをえない。    納得のしるしに乾いた笑いを返せば早く先を読むよう促された。    「ほら、まだ君の台詞だよ。P76の30行目のリリーの台詞。」    「あぁ、分かっている。     ……あなた様の逞しい腕が躯を弄り、私を高めていくあの高揚感に     私は今日も身を焦がすのです。     そして私の蜜壷にあなた様の雄々しき猛りが埋め込まれ激しく突き上げられ…     ……って、読めるかぁぁぁぁああっ!」    先ほどから自分を騙そうと試みたがもう限界だ。    破廉恥にもほどがある。    卑猥な単語の羅列に俺の我慢はついに限界を迎えた。    怒りそのままに、台本を床に叩きつけてやれば、向かいに立つスザクが    批判げに眉をひそめた。    「ちょっと、台本投げ捨てないでもらえる?ほんと君はガサツになったよね。」    「うるさいっ!何なんだよっこの台本はっっ!」    スザクの言葉に怒鳴り返し、俺は床に転がっている台本(スザク曰わく)を指差す。    言いたいことはたくさんあったが、とりあえず一番聞きたいのは、    いかがわしいことこの上ないこの「台本」とやらについてだ。    「はぁ…君はいつからそんなに物忘れが激しくなったのさ。」    やれやれ…と仕方なさそうに首を振るスザクに沸々と沸いてくる殺意。    思い切り殴りつけたくなる衝動にかられるも、かわされると分かっている以上、    試すだけ無駄と言うものだろう。    とにかく、まずはスザクを問い質すのが先決だ。    「お前が最初に言ったことは一言一句残さず全て覚えているっ!    『今度のラウンズ交流会の際に1人ずつ出し物をしなくてはいけないんだ。     僕は劇担当なんだけど台詞の読み合わせを手伝ってくれないかい?』     だろうっ!     劇の読み合わせとは聞いたが、その劇がこ、こんないかがわしいものだとは     聞いてないぞっ!」    「そりゃ言ってないし。というか、いかがわしいって……。     官能小説劇なんだからこういう内容なのは当たり前だろ?」    此方の抗議を鼻で笑うかのような言葉に、一瞬気が遠くなった。    「か……っ?!何てものを読ませてるんだお前はぁぁっっ!」    「というか普通題名で気付くと思うんだけど?」    まるでこちらが一方的に悪いかのように題名部分を指さされる。    読め、と言外に示され、目を細めた。    「『Across the borderline〜国境を越えた夜の愛〜』……」    スザクの希望通り棒読みしてやれば「ほら。」と勝ち誇った表情。    「こんなにも堂々と書かれてるじゃないか。」    「分かるかっっ!!〜〜もういいっ!俺は帰らせてもらう!」    理不尽すぎる物言いに、即座に言い返す。    何かを探ろうとしてるのかどうかは知らんが、もう付き合いきれん。    というか一度こいつには徹底的に常識というものを叩き込む必要がある、    と俺は主張するぞ。    適当な誰かにギアスでもかけて特訓を受けさせようか……と真剣に人選を    検討し始めていたため、俺はポツリと呟かれたスザクの言葉に反応し損ねてしまった。    「それは残念だなぁ…一年前はあんなに快く手伝ってくれたのに」    「……は?」    「だから、一年前のアレだよ」    (一年前…?何のことだ?)    此方の訝しげな様を見てとったのか、スザクはわざとらしい位大げさに溜め息を吐いた。    「忘れちゃったのかい?     ちょうど一年前、軍隊の余興で劇をやることになった僕のために     一晩中付き合ってくれたのは君じゃないか。」    目を丸くしている俺の前で身振り手振りを交えつつご丁寧にも再現してくれる。    ……というか。    (いやいやいやちょっと待て!記憶を勝手に捏造するなっ!)    呆然としていた俺は我に返ると同時に反論しかけ、慌てて口を閉じる羽目に陥る。    危うく記憶が戻っていない設定であることも忘れて叫ぶところだった。    俺のハイスペックマシン並みの頭脳をもってしてもそのような記憶は一切ない。    これはスザクの罠なのだろうか。ならばここは否定しておいた方が……    いや…だがしかし、そういう記憶を植え付けられているという可能性も    無きにしもあらず、だ。    ふっ……こちらの記憶が戻っているか探るつもりなのかは知らんが…    俺を見くびるなよ、スザク!    想定できる事柄をもとに討議し、自分の中で結論を出す。    時間にして0.1秒ほどだからスザクに何の不審感も与えてないはずだ。    俺は平然を装い、「あぁ…あの時のか。」と白々しい声をあげて見せた。    「あぁ、そうだったな。忘れていたよ。     しかし残念ながら俺は今日既に予定が入っていてな。     またの機会によろしく頼むよ」    実に完璧なスマイルをもって言い切ってやる。    言外に「これ以上付き合う気はない」という意味を滴るほど滲ませて。    完璧に勝った気でいた俺は、そういうことだから、ときびすを返した。    ……返すはずだった。    忌々しいスザクの言葉さえ聞こえて来なければ。    「ふぅん……逃げるんだ?」    「……何?」    「いや、君もこの一年で随分と忙しくなったんだなぁって。     ……それとも、台本通りに読む自信がなくて逃げるつもりだったとか…?」    「お前……俺を馬鹿にしているのか?」    「まさか、そんなこと滅相も無いよ。     たださっきの台本の読み方が随分とたどたどしかったからさ。     読む勇気が無くなったんじゃないかって心配に思っただけだよ。」    「引き止めてごめんね」と言いつつも馬鹿にしきった表情で、    用済みだとばかりに手を振ってみせるスザク。    その姿を見た途端、俺の中の何かが弾け飛んだ。    「ふ…ふふふふふ……貴様、この俺を愚弄したな。     良かろう!     演技にかけては当代随一とうたわれる、この俺様の本気というものを     全力で目にもの見せてくれるわ!」    「はっ。出来るものなら見せていただきたいものだね。」    (スイッチ入ったな……)    目には見えないコングが高らかに鳴り響いたのを感じ、    スザクはこっそり思いを巡らす。    吉と出るか凶と出るかは分からないが、記憶を取り戻しているかどうかを試す    せっかくのチャンスを逃す手はないというものだ。    それに……    「いいだろう!あとで吠え面かくなよ、スザク!     百発百中のフェロモンボイス(命名リヴァル)で貴様のケダモノの本性を     今日こそ暴いてくれるわ!」    「っ言ったな!     君こそ僕の『誑し男の色気』(命名ジノ)に腰が砕けないように気をつけるんだな!     君のその淫乱な本性を引きずり出してやる!」    ここまで言われておめおめ引き下がるわけにはいかない。    ―――男の意地にかけても。    お互いの言葉で激しい臨戦状態となった二人を止めるものは    幸か不幸か、存在しなかった。    †††    「……なぁ、アーニャ…」    「なに?」    「真っ昼間から卑猥な台詞を大声で叫んでは、アクロバティックなプレイを     繰り広げているあの2人は一体何をやってるんだ…?」    「見ての通り」    「いや、見ただけじゃ変態な痴話喧嘩にしか見えないんだけど…」    放課後、生徒会室にやって来たジノとアーニャは、役者顔負けな演技を    繰り広げる2人をただただ眺めていることしかできなかったとか。  

   別ジャンルでの官能小説ネタを見て書いてみたくなったものですwww    そのCPでは受けが可愛らしく恥ずかしがってるだけだったのですが    ルルーシュなら、絶対転んでもただでは起きないだろうなぁ…と。    スザルルはお互いがお互いを煽っては自爆しあってるといいな^^      プラウザバックでお戻りください。