今日はスザクと二人っきりでピクニック…のはずだった。
  なのに……

  「なんでお前達がここにいる―――――っ?!」

  ルルーシュの震える指の先には、当たり前のように座っている某皇族3人衆の姿があった。


    桃色交響曲―ももいろシンフォニア―

  「はははっ、聞くだけ野暮というものだよ、ルルーシュ。」   「人を指さしてはいけないだろう、ルルーシュ。」   「お久しぶりです、ルルーシュ。」   「ルルーシュ」の部分を綺麗にハモらせ、のほほんと返事を返す3人に   ルルーシュは口をぱくぱくさせるだけで何も言えない。   「ユフィ?!なんで君まで…?」   隣にいたスザクは、思いがけないところで会った主に目を丸くしていた。   この時間は政庁で勤務のはず…なのだが。   首をかしげるスザクにユーフェミアはふわりと微笑んだ。   「私がいてはいけませんか?    騎士が出かけるなら主たるものついていかねばなりませんでしょう?」   「ユフィ、それって普通逆じゃ…?」   「ふふ…ようは抜け駆けすんなっ☆ってことです。」   音を立ててウィンクする姿はとても可愛らしい。   ……可愛らしいだけではない、不穏な何かも混ざっていたが。   その姿にスザクは目を瞠り、それからゆっくりと目を細めた。   「…さすがユフィ、侮れないね。」   「ふふ…なめてもらっては困ります。」   うふふ、あははと軽やかに笑い出す2人は一見、春の日差しのように穏やかだ。   出しているオーラが限りなくどす黒いとしても。   そんな二人に本能的な恐怖を感じたルルーシュは思わずじり、と後退る。   と、何かにつまずき体が大きく後ろに傾いだ。   「うわ…っ」   「危ないな、ルルーシュ。大丈夫かい?」   ルルーシュがよろけるやいなや、後ろから伸びてきた腕にしっかりと抱きとめられた。   ―――まるで転ぶのが分かっていたかのように。   広い胸に抱きこまれ、ルルーシュはぎろりと後方にいる人物を睨みつけた。   「人の足を引っ掛けておきながらよく言ったものだな、シュナイゼル!」   「おや、さすがルルーシュだね。気付かれるとは思わなかったよ。」   にこやかに受け流すシュナイゼルに、ルルーシュの額に青筋が浮かんだ。   「あんなに露骨に足払いをしておきながら気付かないわけないだろう!   さっさと離せ馬鹿兄!俺に近寄るな!変態が移る!」   「おや、それは我が弟クロヴィス撃退に使った言葉だね。    変態と言われて落ち込んでいたよ。残念ながら私には効かないけどね。」   ルルーシュの暴言をさらりと流し、シュナイゼルはくすりと笑う。   「それにしても口が悪くなったようだね。…少しお仕置きだ。」   「…ばっ、どこ触って…っ」   体を擽るように手を動かされ、ルルーシュは顔を真っ赤にして抵抗する。   「〜っ!やめ…シュナイゼルっ!!」   「ははっ、相変わらず弱いな、ルルー…」   「僕のルルーシュに触らないでくれます?変態お義兄さん。」   いつの間に来たのかシュナイゼルの後ろには煌めく様に真っ黒な笑みを浮かべるスザクの姿。   手には抜き身の剣を持っている。   「私は君にお義兄さんと呼ばれるいわれはないはずだが?」   にこやかな笑みを浮かべてシュナイゼルはゆっくりと振り返る。   もちろん、手の動きは止めずに。   「いい加減に離せ…っ」   「俺のルルーシュから離れろ変態☆」   ちゃき、と剣を首に突きつけ、にっこりと微笑むスザク。   ――纏うはどす黒いブリザード。   シュナイゼルは剣など気にも留めない、優雅な仕草でルルーシュから手を引いた。   「ほう、枢木の分際で生意気な態度だね。」   「お褒めに預かり光栄です。」   「…君とは一度、きっちりと決着をつけといた方がいいようだ。」   ふっと口端をあげてみせたシュナイゼルはやれやれ、と肩をすくめ   「邪魔者を退治してくるからちょっと待ってなさい。」   とルルーシュに安心するよう微笑みかけるとスザクを抹殺するべく向き直った。   その隙を逃すはずもなく、ルルーシュは再度逃亡をはかる、が。   「ルルーシュ、どこに行くつもりだ?」   ルルーシュは忘れていた。   ――敵はまだ残っていたことに。   きびすを返したルルーシュの足を払ったのは…   「コーネリア…。」   「なんだ?」   「いや、何でもない…。」   何か文句を言おうと思うものの脱力感に襲われ、結局ルルーシュは無言で地面に突っ伏した。   ……もう何も言う気にならない。   「そうか。それにしても相変わらず細いやつだな。   腰なんてユフィとそう変わらないんじゃないか?」   コーネリアはルルーシュの様子を気にとめることなく、何の前触れもなしに腰を掴みあげた。   びっくりしたのはもちろん、ルルーシュだ。   「何をするっ!?」   「兄弟のスキンシップだ。」   「だからなんでそう触りたがるんだっ!シュナイゼルといい、ユフィといい…っ!」   「スキンシップとはそういうものだろう?ん?なんだ、一丁前に抵抗するのか?」   上に乗っているコーネリアを振り落とそうと暴れるが、余裕でかわされ   しまいには首根っこを抑えつけられてしまった。   「く…っ」   「全然力がないやつだな。ちゃんとご飯を食べてるのか?」   抵抗しようと試みるものの、上から関節部分を押さえつけられては   抵抗らしい抵抗もできないわけで。   「…っ貴様に力がありすぎなんだ。」   「む、ならば私が直々にお前に稽古をつけてやろう!」   悔しげに呻くルルーシュの言葉をどう受け取ったのか、   何かを閃いたらしいコーネリアはなんともありがた迷惑な提案をしてきた。   嬉々としてスケジュールを調整していくコーネリアにルルーシュの顔から血の気が引く。   ――そんなことされたら殺される…っ!   必死に逃れる方法を考えるルルーシュに気付くことなく、   晴れやかな笑みを浮かべたコーネリアがまさに死刑宣告を告げようとしたその時。   ルルーシュに救いの手が差し伸べられた。   「おやめください、お姉様。それではルルーシュが死んでしまいます!」   「ユフィ…!!」   見上げた先にはコーネリア最愛の妹、ユーフェミアの姿。   どこか困ったような表情で言う様子にルルーシュは、ほっと胸をなでおろした。   彼女の言うことならコーネリアも聞くだろう。     しかし続いて紡がれた言葉に、それが果てしなく気のせいであることを思い知る羽目になる。   「ルルーシュに筋肉がついてしまったら私達の野望が果たせなくなってしまいますっ!   あのルルーシュ着せ替え計画が!」   「はっ!…そうであったな、すまないユフィ。」   凄まじい音をたててルルーシュの頭が地面に激突した。   ――コーネリアを止めるのではなく、むしろ別の方向に導いていった気がする。   よろよろと起き上がるも、その事実にルルーシュは眩暈を覚えずにはいられなかった。   あの姉にしてこの妹あり、か…と再び沈没しかけたルルーシュだったが、   先ほどの言葉にひっかかりを覚え、顔をひきつらせる。   「おい待てユフィ!何の話だっ?!」   「うふふ…安心してください、ルルーシュ。準備はすでに整いつつありますから。   貴方が心配する必要はありません。」   「誰も心配なんかしてない!俺はそんな話聞いてないぞ!?」   「ふふ、当たり前です。貴方にはまだ何も話していませんもの。」   自分の預かり知らぬ所で密かに計画が進められているらしい。   ……もちろん対象は自分自身で。   彼女の計画で自分に被害がなかったことは皆無に近い。   なんとしてでもやめさせるべく、ルルーシュが頭をフル回転させている間も   着々と計画は進んでいく。   「衣装の方がまだ足りてなくて…。」   「そうだな…私の洋服をいくつか提供してやる。好きなものを持っていくといい。」   「ありがとうございます、お姉様。」   「なんなら新たにルルーシュ用の洋服を作るか?」   「それは素敵です!あ、でもスリーサイズが…。」   「なに、今計ればいいだけのことだろう?」   ルルーシュは自分の思考で手一杯だったため姉妹の会話を聞いていなかった。   特に一番最後の不穏な発言を。   それこそがルルーシュにとって致命的なミスとなる。   「ほわぁっ?!な、えっ?!」   思考の海に沈んでいたルルーシュは、突如として襲った感覚に   素っ頓狂な声と共に、強制的に現実へと引きずりあげられた。   そこでルルーシュはようやく気づいた。   自らの服を無理矢理脱がされているという衝撃的な事実に。   「男のくせに相変わらず白いやつだな。」   「ちょ、ま…何やって…おい、脱がすなぁぁぁっ!!」   コーネリアを引きはがそうと暴れるルルーシュに、ユフィが慌てて宥めにまわる。   「あぁ、暴れないでくださいルルーシュ。スリーサイズを測りたいだけなんです。」   「スリーサイズっ!?なんでそんなものが必要なんだっ!?」   「それは勿論ルルーシュに素敵な衣装を着せるためです。」   にっこりと無邪気に告げられた言葉に、ルルーシュは数瞬の間をおいて再び暴れだした。   「断固拒否するっ!!というかコーネリア、貴様どこまで脱がせる気だっ!?」   「何って全部だろう?」   「全部脱がせる必要がどこにある…ってうわぁぁぁぁぁぁっ!?」   桃色の花々が咲き乱れる野原に,ルルーシュの断末魔の悲鳴が響き渡った。   †††   ようやくシュナイゼルを倒したスザクが見たもの。   …それはコーネリアに押さえつけられ、半分以上脱がされているルルーシュであったという。   真に恐ろしいのは案外女性達の方かもしれない…と心の底から実感したルルーシュだった。  

  いつか書いてみたかった皇族×ルルでほのぼの(笑)   …というか皇族3人衆参戦のルル争奪戦?   私の中の基本的に皇族3人(+クロヴィス)はこんなイメージです。   ルルーシュを弄りまくって可愛がって引っ張り回しつつもルルを猫っ可愛がりしている感じ。   そのためルルーシュとスザクはそれぞれ別の意味で迷惑を被っています(笑)   プラウザバックでお戻りください。