この話はスザクとルルが裏稼業をしていたらなぁという妄想から生まれたパラレル小説です。
現代的な感じ…?



  人の一生なんて長いようで短いもの。   その間に誰と出会い、誰と別れるのか。何を得て、何を失うのか。   そんなこと誰にも分からない。   明日に待っているのがいつもと同じ日常であるのかどうかすら…。   

      Secret prism 1

  「ん?」   久々に開けたパソコンの前で僕――枢木スザクは首を傾げた。   僕の前に表示されているのは未開封のメール。   メール自体はなんということはない、至って普通のメールだ。   問題はその差出人だった。   差出人はゼロ―――今世間を賑わせている凄腕の情報屋。   間違っても一介の仕事屋にすぎない僕とは関わることのない人間、のはずだった。   †††   ――頭脳明晰で稀代のパソコンマスター。   パソコンさえあればどんな防壁も意味をなさないと言われ、   堅固な砦も一瞬にして破壊する。それも徹底的に。   そのためゼロという異称が付けられ、今やそれがコードネームとなっているほどだ。   しかしその姿は闇に包まれていて性別すら分からない。   彼が抱えている数千の部下でも幹部クラス以上の、   それもごく限られたものしか彼の素顔を見たことがないと言われている。   僕がゼロについて知っていることと言ったらそれくらいだった。   「…そんなにすごい人から僕にメールが届くなんて…僕、そこまでヤバいことしたっけ?」   何度も言うようだが僕は裏家業はしているものの、   こちらの世界ではちょっとばかし身体能力が優れているだけの一般人だ。   …裏家業をしている時点で一般人とは到底言えない気もするけど。   とにかく、自分の胸に手を当てて考えて見るものの、   目を付けられる心当たりは全くと言ってもいいくらいない。   むしろ間違い電話ならぬ間違いメールなんじゃないかな、とさえ思えてくる。   悩み続けた結果、その楽観的見解に従い今まさに削除ボタンを押そうとした時   僕は重大なことに気付いた。   「…そういえば僕、まだメールの中身見てないじゃん…。」   そう、僕は差出人に余りにも驚いたためメールを開封することすら忘れていたのだ。   ここで悶々悩んでるならさっさと開ければ良かったな、と自分の失態に思わず苦笑する。   もしかしたら…という一抹の不安を感じないわけではなかったが   僕は覚悟をきめ、おそるおそる開封ボタンを押した。   ――それが僕の運命を大きく変えてしまうとも知らずに。   †††   どうしてこういう嫌な予感ほど当たってしまうのだろう…。   何度画面を見直しても、何度自分の頬をつねってみてもその文字が消えることはなかった。   宛名のところに一字一句違うことなく存在する「枢木 スザク」という文字が。   何を考えるでもなく導き出されるのはたった一つの答え。   ――つまりこれは間違いメールとかではなく、   明らかに僕に対して書かれたメール、というわけだ。   その一番考えたくなかった、しかし逃れようのない事実に目の前が一瞬真っ白になる。   ズキズキと痛むこめかみを押さえながらメールを読み進めていくと、   さらに頭を抱えたくなる状況が待っていた。   ゼロからのメールは大体こんな感じだっだ。   「突然メールをしてすまない。    自分は情報屋ゼロであり、君に折り入って頼みたいことがありメールを送った。    今度扱う予定の事件が、部下を別の事件に回してしまっているため人員が足りず、    自分1人では対処しきれない。    そのため自分の手足となって指示通り動いてくれる人間を探しており、    相談した結果、君――枢木スザクに白羽の矢がたてられた。    扱う事件の詳細は後日話し合いたいので、了承してくれるのなら、    3日後の正午にオレンジ公園(家の近くにある公園だ)の噴水前に来てほしい。    来なかった場合、この話はなかったことにする。」   …これを読んで呻かずにいられる人がいたら見てみたい。   なんか一方的に話が進められていて僕には何が何だかさっぱりだ。   しかも一種のプロテクトでもかかっているのか、返信することができない。   つまり質問は不可能、というわけだ。   この問題に対して僕が取れる行動は2通り。   1つはこのまましらばっくれて話を無かったことにしてもらうこと。   ただしあとで目を付けられる可能性は大だ。   この世界、下手な大物に目を付けられたら即アウト、あの世行きが待っている。   もう1つは腹をすえて指定日時に出向くこと。   でもこれはこれで危ない橋を渡ることになる。   まともに顔すら分からない人と会うのだから偽物の可能性は高いし   本物だとしても、いいように使われてそのままお払い箱の可能性もある。   …どちらにしても無事ではいられないらしい。   たった1通のメールでこんなにも自分の生活が乱されていることに   遠い目をしたくなる。   さっきまでの僕の平穏な生活はどこに行ってしまったのだろう…。   突然訪れた絶体絶命的状況に、僕は無言でパソコンの上に突っ伏したのだった。  

  突発的に書いた初めてのパラレルものです。   詳しい設定とかはGarallyかなんかの方で紹介できたらなぁと思ってます。   この設定のネタはいくつかできているんだけどな…。   日の目を見ることはあるのかしらorz   長編ものは極端に苦手な黒猫なのでまともに続くかも不安ですが(爆   ラストと大体のプロットはできているので最後まで完走したいです…。